kyoneco’s blog

教育、数学、統計といったテーマについて考えていきます

すべての学習の基礎となる読解力

小学校に上がってからは、通常は授業や塾でもなにか教本をもとにして知識の獲得とそれの定着をはかるということになります。つまり、知識を得るための基礎は、読むことになります。今回は読むことについて考えていきます。

教本にかかれている文章を読み、自分の知らない知識を得ていきます。ここで、読解能力が高ければ、教本を読むだけで、自分の頭の中で、教本がテーマにしている科目の理論的な体系を身につけることができます。例えば、小学校などで使われている教科書は、各出版社が指導要領を網羅するためにその構成や順序をよく練ったうえでかかれたものです。各教科で重要なこと、つまり指導要領としてかならず学ぶべきことや身につけることはキーワード単位であったとしても教科書に記載されています。

ではどのような特徴を有する人であれば、教本を読むだけで理解が早まるのでしょうか。そもそも、理解をするということは自分のすでに持っている知識を新しく学んだことと関連付けるということです。ということは、豊富な知識のある人であれば、教本を読んだときに、すでに学んだことと関連付けやすくなるので、理解が早く、その教科の体系を構築しやすいと考えられます。一を聞いて十を知るような人はすでに豊富な知識があるからできるのだと思います。つまり少ない情報でも与えられたものから自分の知っている知識とその文脈から類推する力によって関連づけることによってすぐさま理解していかのようにみえるということです。学習一般論としては指導者がいたほうが、情報の取捨選別や重要であることやそうでないところといったメリハリがつけやすかったり学問体系における、いわゆる幹となる部分について事前情報を与えてくれるために、そういったところを集中して学ぶことができるので効率的といえます。指導者がいなくても教科書を読みこなしてしまう人は、自分の頭の中の学問体系の構築において、こういった重要な部分を選り分けて記憶することや関連づける能力が高いということもいえます。

こういった豊富な知識というのはどのようにして得られるのでしょうか。これは学習前の段階、日常生活などで得る情報や自分の趣味の読書などから得られるものでしょう。授業で与えられる情報は一定であり一律です。この情報を活かすには背景となる知識を有していたほうがよいのです。よく読書をしなさいといわれます。それもその科目とは関係ないことについてもいわれることですが、背景知識の豊富さという点でメリットがある行為なのだと思います。また、新聞を読むことについてもこれと類似したものでしょう。日々社会でおきている現象について、いままでもっている知識と関連付けて考えることができる演習としての機能を有しています。起きている事実とその解釈について自分なりに考えることができる人であれば有用だと思います。一方、書いてあることを自分なりに考えることをせず、解釈すらも覚えていまったりするようなことではただの盲信ですので演習としての機能は果たせないでしょう。

よく勉強のできる子で小学校の授業は学ぶことがなくてつまらない子がいるというニュースをみることがあります。勉強のすすんでいる子では教科書で学ぶ範囲のことはすでに学んでしまうことがあるためでしょう。こういった子は別のハイレベルの教材などを与えられる環境にいくようなしくみをつくるというのもいいとは思います。いまニュースなどでみかけるギフテッド教育です。ただ、本当の天才はそれでいいと思いますが、勉強はできるけど、その天才の域には及ばないという子もいるとは思います。そういった子のなかには、ただ知識を吸収することだけで終えてしまっている子もいるのかもしれません。自分なりに応用したり、問いを立てたり、研究的なことができれば、学校の教科という枠だけにとらわれない面白さが伝えられるではないでしょうか。実際知識はあってもその運用というところまでは日常的な授業ではカバーしきれない部分であり、工夫によって、より学問的な成長ができる子たちを見逃してしまっている可能性があります。そこを親や学校以外の教育組織がかかわっていくことでよりその子の学力向上につながるのだと思います。

数を数える練習 日常生活の中での取り組み

https://ies.ed.gov/ncee/wwc/Docs/PracticeGuide/early_math_pg_111313.pdf

 

[Recommendation 1. Teach number and operations using a developmental progression.]

• First, provide opportunities for children to practice recognizing the total number of objects
in small collections (one to three items) and labeling them with a number word without needing to count them.
• Next, promote accurate one-to-one counting as a means of identifying the total number of items in a collection.
• Once children can recognize or count collections, provide opportunities for children to use number words and counting to compare quantities.
• Encourage children to label collections with number words and numerals.
• Once children develop these fundamental number skills, encourage them to solve basic problems.

- このような数の基本的な能力が身についたら、基本的な問題を解かせるようにする。

 

数の知識を使って算数の問題を解くことで、その知識を応用・発展させ、自分の算数力に自信を持つことができるようになります。

 

知識を応用できるようにするには、小さな物の集まりに対して、物を組み合わせたり、取り除いたりして、例えば、2つのブロックを3つのブロックに加えるなどします。そして新しい集まりの中に「いくつ」あるかを数えさせます。子どもたちが上手になるにつれて、教師は少し大きな数字でより難しい問題を提示していきます。

 

問題解決型のタスクを通して、日常的な課題を解決するために数え方を応用する方法を学ぶことができます。例えば、子どもたちが小グループに分かれてゲームをする準備をしているとき、先生は子どもたちにグループの数を数えてもらい、その数からゲームの数を決めることができます。子どもたちが数を数えて簡単な問題を解決できるようになったら、先生は、まず男の子は何人、次に女の子は何人、最後に全部で何人かと聞いて、子どもたちの人数を知るお手伝いをするように指示することができます。そのスキルを実際に応用した例(おやつが必要な子どもの人数を調べるなど)が、子どもの学習に役立ちます。

 

目に見える物の集まりで組み合わせや分離を経験した子どもは、最終的に出てくる物が見えない物の集まりでも同じことができるようになります。

教師は、子どもたちが見ている間に、3つか4つの物を一列に並べます。そして、布や側面が開いている箱で対象物を覆い、対象物が覆われている間に、1つか2つの対象物を追加して、覆いの下の対象物に追加します。あるいは、カバーの下に手を入れて、1つか2つの物を持ち去ることも試してみます。子どもたちは、最初の対象物のグループと対象物が追加または削除されるのを見ますが、最終的な対象物のセットは見ません。そして、子どもたちは、最終的な物の集合を見ずに、いくつ隠れているかを答えなくてはなりません。子どもたちは、指で数えたり、頭の中で数えたりして、この問題を解くことができます。子どもたちが答えを出した後、教師はカバーを取り去り、子どもたちは数を数えて答えを確認することができます。

 

おやつの時間は、子どもたちに足し算と引き算、あるいは "多い "と "少ない "の比較を実際に体験させるいい機会です。おやつをもらったり食べたりしながら、自分が持っているおやつの数を数えます。「1つ食べたら何個になる?」、「お友達から1つもらったら何個になる?」など、子どもたち一人ひとりに違う質問をすることで、さまざまなレベルの子どもたちに数を数えさせることを練習させることができます。数が変わるので、多い・少ないの比較や物の組み合わせ・取り違えを理解する良い練習になります。

集合に数字を対応させる 記憶ゲーム

https://ies.ed.gov/ncee/wwc/Docs/PracticeGuide/early_math_pg_111313.pdf

 

[Recommendation 1. Teach number and operations using a developmental progression.]

• First, provide opportunities for children to practice recognizing the total number of objects
in small collections (one to three items) and labeling them with a number word without needing to count them.
• Next, promote accurate one-to-one counting as a means of identifying the total number of items in a collection.
• Once children can recognize or count collections, provide opportunities for children to use number words and counting to compare quantities.
• Encourage children to label collections with number words and numerals.
• Once children develop these fundamental number skills, encourage them to solve basic problems.

 ・ものの集まりに数の言葉や数字を対応させるように促す。

 

数量を認識し、数え、比較する練習をしたら、数量を表す方法として数詞を導入します。数を数えるよりも先に、身の回りの環境(電子機器、道路標識、テレビなど)から数字を認識することもあります。しかし、子どもたちが数や数え方を理解するための基礎ができれば、数詞について学ぶことはより容易になります。例えば、「3」という数字、3つの物、「3」という話し言葉が、同じものを表していることを学ぶようなものです。

 

数字がわからない子どもは、ドットで数を数え、その数字が何を示しているかを把握することができます。記憶ゲーム「Concentration」*のようなゲームがあります。数字と点などさまざまなゲームが、数字の識別と読み取りの練習になります。

 

*記憶ゲーム「Concentration」

必要な材料
- 1から10までの数字とそれに対応する点の数が書かれたカード10枚と、物の絵(1から10までの数字に対応する物の数)が書かれたカード10枚の計20枚を1セットとする。
- 1~10の数字ができるようになったら、11~20の数字のカードを作ると、より高度な遊びができます。

半分のカードは、片面に数字とその量を表す点(例えば数字の3と3つの点)があり、もう半分は片面に物の集まりの絵(例えば馬3頭、アヒル4羽)がある。各カードのもう一方の面は空白である。

カードは裏向きで置かれ、数字カードと絵カードは別の場所に置く。

プレイヤーは数字カードと絵札を1枚ずつ選ぶ。数字カードと絵カードが一致したら、そのプレイヤーはそのカードを手に入れる。一致するカードがなくなるまでゲームを続ける。最も多くのカードを持っているプレイヤーを優勝とする。

 

量の比較 具体的な教え方

[Recommendation 1. Teach number and operations using a developmental progression.]

の続きです。(

https://ies.ed.gov/ncee/wwc/Docs/PracticeGuide/early_math_pg_111313.pdf

• First, provide opportunities for children to practice recognizing the total number of objects
in small collections (one to three items) and labeling them with a number word without needing to count them.
• Next, promote accurate one-to-one counting as a means of identifying the total number of items in a collection.
• Once children can recognize or count collections, provide opportunities for children to use number words and counting to compare quantities.
• Encourage children to label collections with number words and numerals.
• Once children develop these fundamental number skills, encourage them to solve basic problems.

 

点数を競うゲームをしながら、増倍則( increasing magnitude principle )の練習ができます。例えば、2人の子供に、2組のブロックなどで表した点数を比較させて、どちらが多くて勝ったかを数えさせます。具体的には、「A君は5つ持っているけど、B君は1、2、3、4、5、6つ持っている。6は5より多いよ、だって6が5の次に来るんだから」のように、その過程をまとめて伝えるようにします。

 

数の比較ができるようにするために、数後関係(発達段階における第4段階)を習得させます。日常生活のなかで、数後関係について学ぶ機会がたくさんあります。例えば、「A君は明日誕生日です。今、A君が4歳なら、明日は何歳になるかな?」というようなやりとりがあります。また、「今、3号室と4号室を通りました。次の部屋は何号室ですか?」や「今日は12月4日です。明日は12月何日でしょう?」といった問いかけもできます。

 

一対一の物の数え方や数後関係を使った具体的な比較ができるようになったら、隣接する数詞を比較させるようにします(発達段階の5段階目)。数字のリストをみせることや数字を順番に並べることで、数字を比較させます。リスト上の、ある数字の位置から、どの数字がそれより大きいかや少ないかがわかります。

数字のリストを使って数を数えることで、リストの前の方に書かれている数字が集合の要素としてより少ないことを表し、リストの後の方に書かれている数字が集合の要素としてより多いことを意味していることがわかります。つまりこれらはより小さい量とより大きい量を示していることを理解させることができます。

練習を重ねると、数字のリストがなくても比較できるようになります。次の数字の感覚を訓練させる取り組みに移る前に、「どちらが多いですか」という質問に素早く答えるように十分に練習させます。

 

増倍則を習得し、数後関係に慣れてきたら、直後の数は前の数より1つ多いこと理解させます。例えば、数を数えるときに6より7が後に来ること、7は6より多いことは知っていても、7が6よりちょうど1つ多いこと、数え方の各数がその前の数よりちょうど1つ多いことには気づいていないかもしれないからです。

 

数を数えることによる集合の大小の比較

https://ies.ed.gov/ncee/wwc/Docs/PracticeGuide/early_math_pg_111313.pdf

[Recommendation 1. Teach number and operations using a developmental progression.]

の続きです。

• First, provide opportunities for children to practice recognizing the total number of objects
in small collections (one to three items) and labeling them with a number word without needing to count them.
• Next, promote accurate one-to-one counting as a means of identifying the total number of items in a collection.
• Once children can recognize or count collections, provide opportunities for children to use number words and counting to compare quantities.
• Encourage children to label collections with number words and numerals.
• Once children develop these fundamental number skills, encourage them to solve basic problems.

複数のものの集まりを認識したり数えたりできるようになったら、数詞や数え方を使って量を比較する機会を与える。

 

Subtizingや1対1の対応による数の数え方によって、コレクションに含まれるものの数を確実にわかるようになったら、数詞を使って異なる大きさのものの集まりを比較するようにします。

 

言葉で意味のある大きさの比較をできるようにするために、「多い」,「少ない」といった関係性のある用語を理解させるようにします。

例えば、明らかに異なる数のクッキーがのせられた2つの皿を見せて、「どっちのお皿にクッキーが多い?」と尋ねます。また、同じ数のものを並べた、2つのグループを見せることで、「等しい」ことも理解させることができます。

こういった多い、少ない、等しいなどの言葉を使うことで、もっと大きいものの集まりを比較するための語彙を身につけることができます。

 

言葉で比較することに慣れたら、2つのものの集まりの大きさを比較するために、数を数えることを勧めるようにします。

cardinality chart Teaching Math to Young Children EDUCATOR’S PRACTICE GUIDEより引用


数列のなかで、ある数を表す数詞よりさらに先にある数詞が、より大きな集合を表すことを理解させます。これは、"Increasing magnitude principle "とよばれる、数が大きくなっていく原理です。

引用した図は、この原則を視覚的に理解させて、数を比較するのに役立ちます。この表を使って、次の数字が前の数字よりちょうど1つ多いことを示すことができます。また、数字の前後関係、隣り合う数の比較といった概念をわかるようにすることができます。

 

 

数感を獲得させる 1対1のものの数え方

 

https://ies.ed.gov/ncee/wwc/Docs/PracticeGuide/early_math_pg_111313.pdf

[Recommendation 1. Teach number and operations using a developmental progression.]

の続きをまとめていきます。

• First, provide opportunities for children to practice recognizing the total number of objects
in small collections (one to three items) and labeling them with a number word without needing to count them.
• Next, promote accurate one-to-one counting as a means of identifying the total number of items in a collection.
• Once children can recognize or count collections, provide opportunities for children to use number words and counting to compare quantities.
• Encourage children to label collections with number words and numerals.
• Once children develop these fundamental number skills, encourage them to solve basic problems.

次に、ものの集まりの内の総数を特定する手段として、1対1に対応させて正確に数えることができるように促します。

 

小さな数の認識(Subitizing)は、一対一の数え方の原則を学ぶための基礎となります。多くの場合、数の順序(「1、2、3、4...」)を暗唱することで数についての学習を始めます。しかし、数える対象の集まりに数列の数字を割り当てることを学ぶのは、困難なことがあります。
1~3個のものを数えずに確実に認識し、ラベルを貼ることができるようになると、数字と量を結びつけることができるようになります。

正確に数を数えるためには、ものに1つだけ番号の単語を割り当てる必要があります。
例えば、1円玉を4つ数える場合、子どもたちは1円玉を指して "1"、2つ目の1円玉を指して "2"、3つめの1円玉を指して "3"、そして最後の1円玉を指して "4 "のように行います。
最後の数詞がもののあつまりの合計(基数値)であるという基数原理を認識する練習もできます。すでにわかるようになった小さなもののあつまりを使って1対1に対応させる数え方を学ぶことで、数える過程で使われる最後の単語が合計と同じであることを理解することができます。

証明の読み方・考え方 読書メモ 第11章

 

kyoneco.hatenablog.com

 

証明の読み方 11章  特殊な証明法

 

Bが特殊な形をしているときに、それに対して決まった証明法がある。


1.一意性の証明法

まず、求める対象が存在することを示す。これが、構成法か背理法を用いて示されたならば、次にすることは一意性の証明である。
そのための方法には2つある。

一つの方法は、ある性質をもった対象で、それに対して、あることが成り立つようなものが2つあると仮定する。そのようなものが実際には一つしかないのならばその対象のもつある性質、それに対して成り立つことや仮定Aに含まれる情報を使って、その2つの対象が実は同じもので、一致することを示す。通常は、前進後退法を用いる。


第二の方法、ある性質を満たす対象でそれに対してあることがなりたつような2つの異なるものが存在すると仮定する。これは多分ありえないことなので、ある性質とあることが成り立つことと仮定Aのもつ情報とそれに本質的に2つの対象がことなることを用いて、矛盾を導き出く。

 

2.部分否定法
結論Bが「Cが真であるかまたはDが真である」という形の場合に必要である。つまり、「AならばCまたはD」が真であることを示したいときに用いる。
前進後退法によってAが真であると仮定して、Cが真でないという仮定を付け加えたとしよう。
このとき、明らかにDが真であるということになる。
そこで部分否定法ではAが真、Cが偽であると仮定してDが真という結論を導く。
Aが真で、Dが偽と仮定して、Cが真であるという結論を導いてもよい。

 

3.最大最小の証明法
最大、最小に関する問題のためのもの。

(1)Sの全体がxの右にある min{s| s ∈S} ≧x
(2)Sの一部がxの左にある min{s| s ∈S} ≦x
(3)Sの全体がxの左にある max{s| s ∈S} ≦x
(4)Sの一部がxの右にある max{s| s ∈S} ≧x


基本的な方針は、与えられた問題を限定詞を含むこれと同値な命題で置き換えること。
そうすればその限定詞の種類に応じて抽出法や構成法を使うことができる。

 

メモ
結論Bが特別な形をしているときに用いるとうまくいきやすいという方法が紹介されている章です。高校数学でも、一意性の証明と最大最小の証明はよく問われていると思います。

実際に効果のある教材はあるの?

これまで就学前教育と算数をテーマにガイドラインを読み込んで来ました。

https://ies.ed.gov/ncee/wwc/Docs/PracticeGuide/early_math_pg_111313.pdf

RCTを経たエビデンスをみてきて、効果のある勧告についても触れました。

ここまでくると、思うこととして、じゃあ実際どうしたらいいの?、どういう教材を使えばいいの?という疑問でしょう。

 

ガイドラインの補足情報に、参考にした論文の情報がまとめられています。そこで、特に効果が高く、研究の質も担保されているものがあります。Clements教授らが開発した、Building Blocksという算数カリキュラムです。手っ取り早くいえばこの教材を使えばいいということになります。どの程度の効果があるのかというのはガイドラインにまとめられています。たとえばこの引用した表の論文は、基本的な数の概念について、対象群と比較して、effect sizeが0.75あったということです。これは処置の効果の大きさを表しており、0.5で中程度、0.8で効果大とされていますので効果の量としては大きいです。

TableD.2. Teaching Math to Young Children EDUCATOR’S PRACTICE GUIDEより引用

この教材は使えるのかというのが次の疑問としてでてきます。

https://www.mheducation.com/prek-12/program/building-blocks-pre-k-2013/MKTSP-TMB01M0.html?page=1&sortby=title&order=asc&bu=seg#program-id-student-materials-content

 

オンラインでもライセンスを購入してカリキュラムに対応したアプリケーションをつかえるようにみえます。

*実際に購入しようとしてもアメリカ国外ではWebサイトから直接すんなりライセンスをかえないようです。出版社のアジア向けの部署では取り扱っていないようです。アメリカ国外からの注文はハードルが高いようです・・・。

 

教育エビデンスを実践してみる

続きです。

kyoneco.hatenablog.com

 

勧告1の具体的な実施方法についてみていきます。ページ21に記載されている部分をまとめます。

https://ies.ed.gov/ncee/wwc/Docs/PracticeGuide/early_math_pg_111313.pdf

Recommendation 1.
Teach number and operations using a developmental progression.
• First, provide opportunities for children to practice recognizing the total number of objects in small collections (one to three items) and labeling them with a number word without needing to count them.

・まず、1~3個の中にある物の総数を認識し、数を数えることなく、数字の単語で対応づけする練習をする機会を提供する。

 

この勧告の重要なポイントは”Subitizing”のことについていっています。簡単な例をあげてみると、サイコロの目は見ただけで瞬時にわかり、いくつあるかなど数えてません。サイコロに限らず、数個のものが配置されているときに、瞬時にその数全体を認識できます。このスキルはSubitizingとよばれています。

 

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まず、"Subitizing"と表現されている、小さな数の認識を身につけることが必要ということです。これを身につけると、より多くのものの数を数えることができるようになります。また足し算や引き算などのより複雑なスキルの獲得につながるというのです。

 

実際に、小数の認識を体験させるには、1~3個の物の集まりを見たときに、「(物の名前)はいくつ見える?」という質問に答えさせるようにします。1,2、3のように数を数えることなく、小さな集まりの合計を言う練習をさせます。

 

幼稚園などでの教室のなかで、いつでもこういった小数の認識の練習ができます。赤色のシール、壁に貼ってある磁石、積み木など、いたるところに同じものが2ー3つ集まったものを見つけることができます。そういったものをみつけたときに、こどもに「これはいくつ?」と聞くことで練習できます。他の例として、おやつの時間にクッキーを2枚渡し、「何枚ある?」と聞くのも、練習になります。

 

もののかくれんぼは、少人数のグループでできる小数の認識の一例です。

方法は、1.少人数の子供たちと一緒に、マットの上に1~3個の物を数秒間みせる。2.布や箱で覆って、"隠している(物の名前)の数を言える人はいますか?"と子どもに聞く。3.子どもが答えたら、隠していたものが見えるようにする。4.子どもは自分の答えを確認するために数を数えることもできるし、教師は例えば「はい、2つ」と言って答えをいうこともできる。5.異なる数の物を異なる方法で並べたりして遊びを続ける。

小数の認識の練習の一例 Teaching Math to Young Children EDUCATOR’S PRACTICE GUIDEより引用

似たようなものの小さな集まり(例えば、3つの黄色い立方体)で小数の認識ができるようになったら、同じ種類だが物理的に異なるもの(例えば、黄色い立方体、緑の立方体、赤い立方体)で小数の認識の練習に移行します。

 

最終的には、関係のないもの(例えば、黄色い立方体、カエルのおもちゃ、車のおもちゃ)を一緒にして、"いくつある? "と問いかけるようにします。似たようなものを3つ集めたものも、似ていないものを3つ集めたものも「3」であることを強調することで、抽象的な数の概念を理解するようになります。

 

幼児期の発達は、しばしば用語を過剰に一般化させてしまうことがあります。例えば、”たくさん”という言葉をいいたいために、「2」と言った後にそれよりも大きい数である「3」や「5」のような数字をつかって「たくさん」を示したりすることです。

数の概念の限界を認識するために、数の例とそうでない例を対比させる方法があります。

例えば、3つのおもちゃを「3」と言うだけでなく、4つのおもちゃを「3ではない」(例:「それは4つのおもちゃで、3つのおもちゃではない」)と言うことで、子どもは「3」の意味を明確に理解することができます。

 

教育エビデンスを読み込んでみる その2

前回の続きです

kyoneco.hatenablog.com

 

具体的に、提言1が推奨している内容とそれをどのように実施したらよいかについてみていきます。

このガイドラインの提言中に"Developmental progression"という言葉がよくでてきます。この記事中では、とりあえず「発達段階」と訳しておきます。まずは、これの意味することをはっきりさせたいと思います。

以下は、FullバージョンPDFの該当部分の要約です。

https://ies.ed.gov/ncee/wwc/Docs/PracticeGuide/early_math_pg_111313.pdf

 

・効果のある教育法は、子どもがすでに持っている知識を把握して、それをもとにして次の成長につなげることができるようにすることです。

・「発達段階」は、スキルを学ぶ際に、こどもの発達にあった指導の道しるべを教師にわかるようにすることで、こどもが次に何を学習すればよいかはっきりさせます。

・「発達段階」では、まず小さな物の集まり(1〜3個)を扱うことに集中します。その後、徐々に大きな物の集まりを扱います。

 

この記述からわかるように、「発達段階」は道しるべ、いいかえれば工程図や地図のようなもので、子どもがどのように数の感覚を理解・獲得していくかの順番を表しているものです。

「発達段階」の進行のようすを具体例として表にしたものを本文より引用します。

数の知識に対する発達段階の例 Teaching Math to Young Children EDUCATOR’S PRACTICE GUIDEより引用

1.Subitizing(小さな数の認識):ものの集まりの中にある、そのもののすべての個数を素早く認識して、正しい数の言葉で言い表すこと。

2.Meaningful object counting: 一対一で数え、最後に使った言葉が合計と同じであることをわかること(基数原理)。

3.Counting-based comparisons of collections larger than three: 小さな数の認識を使って小さなもののあつまりを比較できるようになったら、意味のある物の数え方を使って、2つのもののあつまりのうち大きい方を判断できるようになること。

4.Number-after knowledge: 常に1から数えるのではなく、数の途中から考えて、次の数字を指定することができるようになること。

5.Mental comparisons of close or neighboring numbers: 隣接する、あるいは近い2つの数字のうち、大きい方を効率的かつ論理的に判断できるようになること。

6.Number-after equals one more: 「2」は「1」より1つ多い、「3」は「2」より1つ多いというように、数字を論理的に比較できるようになると、数え方の順序でどの数字も前の数字よりちょうど1つ多いという結論を出すことができるようになること。

 

このように1から6にかけて次第に、前の段階の要素を踏まえつつ次の数の捉え方を身につけていくという考え方が、「発達段階」です。

教育エビデンスを読み込んでみる

前回の記事の続きです

 

kyoneco.hatenablog.com

 

WWC | Teaching Math to Young Children

https://ies.ed.gov/ncee/wwc/Docs/PracticeGuide/early_math_pg_111313.pdf

についてもうすこし詳細に読んでいきます。テーマは就学前教育・算数・数学です。

今回のガイドラインでは、3歳から6歳の子供に算数を教えるという課題に対応しています。

このガイドラインの大枠について簡単にまとめて日本語に翻訳しています。

 

序論

学校カリキュラムの一部として、特定の算数の活動に時間を割くことは、小学校入学前や入学時の子どもの算数学習に有効であることがわかっています。

また、幼稚園入園時の算数の成績が、読書の成績に関連があるという研究結果があり、数と演算の基礎的な能力が、読書の能力の土台となる可能性があります。

 

このガイドラインは、幼児が算数を学ぶのを支援するために、5つの勧告をすべて一緒に実施することを提案しています。

勧告1では、数と演算が基本的な数学の主要な内容であるとしています。発達段階を通して数と演算を教えるための戦略です。小さな集まりを細分化し、数を数える練習をし、集まりの大きさを比較したり、数字を使った数量化機会を提供する必要があります。そして、簡単な算数の問題を解けるようにする促します。

勧告2では、幾何学、パターン、測定、データ分析という、他の4つの基礎的な数学の内容を教えることの重要性について説明しています。

勧告3と勧告4は、教師が幼児の既存の算数の知識を基に、進捗を確認して指導を可視化して、幼児の日常で用いるような算数の知識を、算数指導で使用される正式な記号に結びつける方法について概説しています。

最後に,勧告5では,教師が毎日算数に時間を割き,一日を通して算数を教室の活動に結びつける方法について提案しています。

 

エビデンスのまとめ 
数と演算に的を絞った指導を含む介入を検討した 21 の無作為化対照試験と2つの準実験研究に基づいて,この勧告に中程度のエビデンスがあるとされました.この勧告を支持する研究は、保育園、幼稚園、および幼稚園の教室で実施されています。11の研究では、数と演算のみの指導の効果を評価しており、その研究すべてが、基本的な数の概念または演算に少なくとも1つの正の効果を示していました。
研究結果は肯定的な効果を示す傾向でしたがこれらの効果の一部は、数と演算の領域で行われた指導以外の要因によってもたらされた可能性もあります。ほとんどの介入は,このガイドの複数の推奨事項に関連した実践も含んでいました。結果的には指導による正の効果は、数と演算の指導が子どもの算数力を向上させることを示していると評価されています。

このガイドラインに用いられた研究結果と勧告の対応を示した表.Teaching Math to Young Children. EDUCATOR’S PRACTICE GUIDEより引用

 

 

 

教育エビデンスを利用してみる

各国でランダム化比較試験を経たエビデンスを用いた教育政策が行われています。今回は米国教育省、教育科学研究所(Institute of Education Sciences, IES)が設立した、WWC( What Works Clearinghouse)が公表しているガイドラインをみてみます。

教育全体では広範になりすぎるので、テーマとして、就学前教育・数学として範囲を限定してみます。

 

WWC | Find What Works!

ホームページのトップをみてみると、数学、言語などの各項目についてまとめられています。

今回は、エビデンスに基づいた実施することを推奨している勧告がまとまってあるPractice Guidesをみてみます。これらはたくさんの報告があるのですが、今回のテーマにあう内容である、「Teaching Math to Young Children 幼い子供たちに数学を教える Released: November 2013」を選択してみます。

WWC | Teaching Math to Young Children

幼稚園、幼稚園、幼稚園の子供たちに数学を教えるための5つの推奨事項がエビデンスの強さとともに記載されています。項目のタイトルの概略は次のようになります。

1 数とその操作を教える

2 幾何学、パターン、測定、データ分析を教える

3子供達がすでに知っていることに関連づけて教える

4子供達に自分の世界を数学的に見て説明するように教える

5 毎日数学を教え、学校での数学の指導とあわせる

勧告のFullバージョンはpdfで164ページあります(

https://ies.ed.gov/ncee/wwc/Docs/PracticeGuide/early_math_pg_111313.pdf#page=18

)。

全部要約したり閲覧するのは時間がかかるので、エビデンスレベルがもっとも高い、

[Recommendation 1. Teach number and operations using a developmental progression.]をまずみてみます。

• First, provide opportunities for children to practice recognizing the total number of objects
in small collections (one to three items) and labeling them with a number word without needing to count them.
• Next, promote accurate one-to-one counting as a means of identifying the total number of items in a collection.
• Once children can recognize or count collections, provide opportunities for children to use number words and counting to compare quantities.
• Encourage children to label collections with number words and numerals.
• Once children develop these fundamental number skills, encourage them to solve basic problems.

翻訳してみると、

・まず、2−3個のものの集まりについて、それらが全部で何個あるのかをわからせるようにする。そのものの数を数えさせることや数を数えることをしないで区別するような教え方もしてみる。

・次に、あるものの集まりのなかにあるもののすべての数を特定する方法として、1対1に対応させる数え方が正確にできるようにする。

・ものの集まりを認識したり、数えたりできるようになったら、数詞の使い方や量を比較して数を数えるやり方を教える。

・ものの集まりに数詞や数字を対応させるようにする。

・こういった数に対する基本的な能力が身につけたら、基本的な問題を解かせるようにする。

といったところでしょうか。

数を数える、なにかと対応させる・数詞であったりものであったりそしてものの量に対する感覚も訓練させて問題演習で定着させるといったところでしょう。

どういった経緯でこういった訓練が有効なのかなどはFullバージョンに記載されておりそれについてさらに深めていきたいと思います。

 

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教育とエビデンス

医療業界では、エビデンスに基づく医療はもう当たり前です。各学会が出しているガイドラインには対象となる疾患の診断や治療について、標準的に行われるべき内容が記載されています。その根拠となるのが、その分野での研究論文です。これは臨床試験が実施され有効性が統計的に意味のあるものであるということを確かめたものをまとめたものです。

生理学的な知識からのこうなるだろうといった推論は行われることはありますが、それが実際の患者さんで有益かどうかというのは異なること場合があります。例えば、薬剤投与において、原理的に有効と予想されるが実際に投与してみても、その効果がなかったということがあるのです。現代の医療では、臨床試験を通して治療の効果が確からしいものを用いているのです。

 

では、教育についてはどうでしょうか。各学校や先生たちがそれぞれ生徒の成績向上によさそうだという視点で授業していると思いますが、統計的に意味のある結果を模索したものでしょうか。これを調べるためには、例えば、数学において、2つの教授法があったときに、成績や背景が同一とみなせる2つの集団にわけて、その教授法によって試験の成績の違いに差があるかというのを比較すること(ランダム化比較試験)が考えられます。いくつも教授法はあるように思いますが、優れている方法というのを模索した研究はあるのでしょうか。もしあるのだとしたらそれを用いたほうが学力向上にとっては合理的ということにはなります。

教育においてもエビデンスに基づいた教育が行われるべきと考えます。教育に多額の公的投資をしている以上、その費用対効果はきちんと評価されなければなりません。それも統計的手法を通した上です。少なくとも公教育においては、授業のガイドラインが本来はあるべきなのです。一定の水準に到達させるために、コストは最小で、成績がもっとも向上する方法を模索・開発しつづけなければなりません。すべての学校でこういった実験的な教育は行うことは労力の観点でもコストの観点でもできませんしそうするべきではないでしょう。可能であればある一部の実験校で教授法が開発されそれを評価したうえで、全体に適応するようなモデルをつくっていく必要があります。

簡単に調べる限り、日本では教授法を一覧化しエビデンスレベルでまとめたものは見当たりません。エビデンスをかたる教育学の論説はみかけますが具体的に生徒の指導に用いられるレベルのまとまったものがないのです。方法論の論評だけでなく、実際に有効だと期待される方法について、介入試験して結果をだすというのが研究者のあるべきすがたにも思えますが。

 

海外、特にアメリカでは教育へのエビデンスが重視されています。エビデンスデータベースとして、有名なものに、キャンベル共同計画、ジャミール貧困アクションラボ、インパクト評価に関する国際イニシアティブがあります。キャンベル共同計画は、社会、行動、教育の分野における介入の効果に関して,人々が正しい情報に基づいた判断を行うための援助することを目的する国際的な非営利団体です。キャンベル共同計画については、日本語でその抄録の一部が翻訳されています。

https://crimrc.ryukoku.ac.jp/campbell/

「就学前の言語能力は、学校における読解力の向上と関係している」という報告の抄録では、その結果として、

言語理解(例:語彙と文法)と記号に関係する能力(例:音韻に対する意識と文字に対する認識)の双方に関係する種々の能力は、言語を読み解く能力、ひいては学校における読解能力の発達にとって重要である。したがって、読解能力の指導は、広範な言語能力に焦点を当てれば上手くいく可能性が高い。

 

・記号に関係する能力(例:音韻に対する意識と文字に対する認識)は、単語の理解を通して、間接的に読解力と関係している。

・言語に関する理解力は、直接的に読解能力と関係している。

・記号に関する能力と言語に関する理解力は、密接に関連していた。

・言語に関する理解力は、年少者よりも年長の読み手において、より読解力にとって重要だった。

 

キャンベル・システマティック・レビュ ー』2017年14号に掲載されたHanne Næss Hjetland, Ellen Irén Brinchmann, Ronny Scherer, Monica Melby-Lervåg による「後の読解力に関する就学前の兆候」(DOI 10.4073/csr.2017:14)に基づき作成された。

とまとめられています。抄録の翻訳なので本家(

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.4073/csr.2017.14

)にあたって評価すべきだと思いますが、科学的な根拠のある教育手法の事実をこのように入手できるのは貴重です。

ちなみに本家での結論は、

In summary, we argue that the results of the present review may strengthen preschool practices and increase our ability to provide children rich opportunities for literacy learning.

です。就学前、要するに小学校にあがるまえに、言語能力向上を目的とした教育が行われれば、小学校にあがってからやそれ以降の読解力が向上するかもしれないということです。

費用対効果の観点からすれば就学前教育への投資がよさそうということになります。このエビデンスをもとにすれば人間は後戻りできないので就学前の言語教育できる環境であれば積極的にしたほうがよさそうだと判断できます。

 

授業を活用することの重要性 その4

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授業の構造を最初に解き明かすというのは重要です。この1回の授業がその科目の複数からなる授業のなかでどういった位置づけなのかを知ると理解がすすみます。先読みのところで、構造を把握することについて述べましたが、これは評論文などを読みこなすことと同じようなものです。意味段落間のつながり、主張、同じことの繰り返し、例示、対比といった内容がといったように論理的な構造を抽象度があがった視点でとらえることができると全体を俯瞰することができるようになり、理解がすすみます。

人間の理解というのは、既存の知識との関連性のなかからくるものです。つまり、これまでこういったことを理解して、こういった理論体系ができている。新しく学ぶ内容は、この理論体系のこの該当項目に入る、またはそれと関連性があるといったことを見いだしていく作業といえます。こういった、関連性がかたちづくられていると、新しく学ぶ内容であったとしても、まったく新しい内容というふうにして面くらうようなことはなくなります。また、分野が異なることがあっても理論体系の理解があると同様の論理構造によってそれをとらえることができるため、「同じことをいっている」、「あのことと似ている」というように感じられるようになるのです。これが理解するということです。こういった科目のもつ理論体系全体の理解の構築は一朝一夕にできるものではありません。しかし、地図の大枠をつくるようにこういったことを意識してできるようになると学習の効率が高まります。

 

このような大きな枠組みの理解というのは、授業が始まるまえからも準備することができます。それは、学習のカリキュラムをあらかじめみておくということです。これを手元において何度も見返すというのは有効です。自分がいまどのようなことを学習しているかを俯瞰してみることができるので、学習しているときにこんなにたくさん学ばないといけないと感じることが少なくなると思います。学習内容を把握するというのは、その学習量を把握するということです。「困難は分割せよ」という名言がありますが、それの一つととらえてもらってかまいません。なにも全体像がわからずただただ授業をうけているのでは、無限に多い学習内容に立ち向かっていかないといけない圧迫感のようなものに襲われてしまうのです。しかし、カリキュラムのような学習計画の全体像、つまり全授業における目次を手にすることで学習内容の地図を手にすることができるといえます。学習内容に関するこういったメタ的情報は学習効率をあげるのに役に立ちます。授業においては、予習復習をしなさいといわれますが、予習をするというときに、必要なことは、先生からの解説の前に教科書を徹底的に読み込んで理解するということではなくて、こういう枠組みの確認なのです。

 

ここまでで考察した内容を振り返って、授業を活かす、授業の受け方をまとめます。
まず、授業を受ける前に、カリキュラムをみます。今日受ける授業内容が全体の授業のなかでどういったところに位置するかを確認します。そして授業をうけます。授業開始直前には授業を受ける科目の目次に目を通します。また、当該範囲の教科書の中項目に目を通します。そして、これまでの知識との関連性をすこし考えます。また前日以降に受けた授業内容を振り返ります。このときにはノートを振り返るといいでしょう。授業がはじまればどういった論理で授業が進行していくのかを追っていきます。先生が他の人を当てたときも自分が当てられたものときと同じように考えます。授業中にわいた疑問点があれば書きとめておき、授業後に質問します。授業の途中で手を挙げてとめることを許している先生であればそうします。授業が終われば、休み時間に軽く復習します。見返す回数が多いほど記憶に残るためです。そして次の授業の準備をします。そうして一日の授業がすべておわり帰ったとします。帰ったら、軽く授業の内容を振り返るといいです。思い出される回数がふえるほど記憶に定着します。宿題がでたら帰ってからすぐにやってしまうといいでしょう。学習したときから時間が立つ前にやったほうが忘れおらず効率的だからです。記憶の再生にもいいです。最後に寝る前に軽くその日にうけた授業のノートをみたり思い出してみましょう。寝る前にやると寝ている間に記憶が定着します。また、次の日のカリキュラムや予定をみておくといいです。これを毎日繰り返します。

 

授業を活用することの重要性 その3

授業の考察についての続きです。

 

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1回の授業で、生徒にとって、これまで知らなかったたくさんの情報が与えられます。その情報を整理して頭の中にいれて、他の人に伝えられるようになるというのが理解するということです。例えば、授業を受けて帰ったあと、家族に「今日は学校でなにしてきたの?」と聞かれたときに、端的にその日に習ったことを言えれば、授業でやった内容について身についているといえます。情報を与えられても、そのときはわかった気になっただけで、時間が立つと忘れてしまっていたり、学習内容を再現できないというのは、授業で習ったことが身についていないため、授業を活かしきれていないといえます。


教師は授業でやったことを生徒にしっかり身につけさせるために、宿題を出します。宿題というのは、授業で扱った内容について問題をつくり、自宅でそれを解かせる課題のことです。その量や難しさといったのは教師に任されています。宿題は適切な量・質のものが与えられ、それをこなすことができれば、授業の定着はより一層すすみます。学習内容は時間とともに忘れ去られていくものです。記憶の定着に重要といわれているのは、何回もそれをみることであり、思い出すことであり、習ってから時間が立ちすぎないうちにそれらをすることです。忘れかけていたことも思い出される回数が多いと次第に忘れなくなり、知識が思い出される早さも向上します。


このように、授業ー授業内演習ー宿題といったものが一連の流れとなっています。この流れをこなすことが理想であり、授業で与えられた知識を定着させるために、このフローをこなすことが合理的であるように思います。

 

しかしながら、すべてのひとがこのフローをこなしているとは限りません。授業をやすむというのはこの第一段階でのつまづきです。第二段階のつまづきでは授業中に解説された内容が理解されていないために、授業内演習つまり当てられたときにこたえられないということがおきます。第三段階でのつまづきは、家にかえって宿題をしないことです。

 

第一段階において、授業を受けているときに、その学習内容をどのようにしたら十分に吸収できるのでしょうか。授業において基本的な構成要素として、教科書を読むというのと、教師の話を聞くということです。つまり、教科書を読んで理解するという部分と教師が授業の該当部分の解説をしたときに理解するという部分に対応します。

前者は国語力のなかでも、読解力が高いほど、教師の解説前に教科書に書かれたことを読み取り、内容を把握することができます。例えば、今日はこの部分をやりますといわれたとき、すばやく授業内容の範囲の把握とその概要の把握ができると、授業の先読みができるようになります。この先読みというのは学習の過程において、とても大切な要素です。授業を俯瞰する視点を手に入れるということでもあります。今日はここからここまでやるのか。この範囲にはこういった大項目があり、そのなかにこういった中項目があり・・・といったように頭の中で地図をつくる行為といいかえることができます。

後者の、教師の解説を聞いて理解するのは、ある種のリスニング能力が高いほど有利といえます。話題についてキーとなる単語は聞き取れるのか、学習内容の論理的な構成を聞くだけで整理しながら理解できるか、つながりを意識して聞き取れているのかといったところです。また、板書しないが重要なことを教師がいうことがあったり、具体例として教師が述べるときにも聞く力が大切です。単に単語が聞き取れるというのだけでは不十分であり、話題が全体のなかでどういった位置づけにあるのかを意識して把握していくことが重要です。