教育エビデンスを読み込んでみる その2
前回の続きです
具体的に、提言1が推奨している内容とそれをどのように実施したらよいかについてみていきます。
このガイドラインの提言中に"Developmental progression"という言葉がよくでてきます。この記事中では、とりあえず「発達段階」と訳しておきます。まずは、これの意味することをはっきりさせたいと思います。
以下は、FullバージョンPDFの該当部分の要約です。
https://ies.ed.gov/ncee/wwc/Docs/PracticeGuide/early_math_pg_111313.pdf
・効果のある教育法は、子どもがすでに持っている知識を把握して、それをもとにして次の成長につなげることができるようにすることです。
・「発達段階」は、スキルを学ぶ際に、こどもの発達にあった指導の道しるべを教師にわかるようにすることで、こどもが次に何を学習すればよいかはっきりさせます。
・「発達段階」では、まず小さな物の集まり(1〜3個)を扱うことに集中します。その後、徐々に大きな物の集まりを扱います。
この記述からわかるように、「発達段階」は道しるべ、いいかえれば工程図や地図のようなもので、子どもがどのように数の感覚を理解・獲得していくかの順番を表しているものです。
「発達段階」の進行のようすを具体例として表にしたものを本文より引用します。
1.Subitizing(小さな数の認識):ものの集まりの中にある、そのもののすべての個数を素早く認識して、正しい数の言葉で言い表すこと。
2.Meaningful object counting: 一対一で数え、最後に使った言葉が合計と同じであることをわかること(基数原理)。
3.Counting-based comparisons of collections larger than three: 小さな数の認識を使って小さなもののあつまりを比較できるようになったら、意味のある物の数え方を使って、2つのもののあつまりのうち大きい方を判断できるようになること。
4.Number-after knowledge: 常に1から数えるのではなく、数の途中から考えて、次の数字を指定することができるようになること。
5.Mental comparisons of close or neighboring numbers: 隣接する、あるいは近い2つの数字のうち、大きい方を効率的かつ論理的に判断できるようになること。
6.Number-after equals one more: 「2」は「1」より1つ多い、「3」は「2」より1つ多いというように、数字を論理的に比較できるようになると、数え方の順序でどの数字も前の数字よりちょうど1つ多いという結論を出すことができるようになること。
このように1から6にかけて次第に、前の段階の要素を踏まえつつ次の数の捉え方を身につけていくという考え方が、「発達段階」です。