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教育、数学、統計といったテーマについて考えていきます

授業を活用することの重要性 その2

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授業というものについて、いちから分析しなおしてみたいと思います。


学校は同年代の生徒達が平日、授業をうけるためにくるところです。そこにくる生徒達は40-50人を一つの単位として教室に集められます。これをクラスとよびます。クラス単位で予め決められたカリキュラムにそって計画的に授業をうけます。
授業では、科目を担当する一人の教師が、クラスの生徒達に授業内容を解説します。授業内容は科目ごとに異なります。科目は、英語、数学、国語などさまざまです。英語という科目のなかでも、細分化され文法、英作文といったかたちでわけられ担当の先生が異なることもあります。

授業は基本的には知識の教授に力点が置かれます。教科書という、科目ごとに学ぶべき内容が記載され、解説された書籍が授業では基本的には用いられます。ただし、教科書というのは教師による解説が前提であり、学習するべき内容のすべてが詳しく細かく丁寧に書かれているわけではありません。教科書は日本の公教育では、国の検定教科書が用いられています。文部科学省の認定が得られたものを用いて、学習指導要領という学ぶべき内容の一定の基準が達成されるように書かれています。
1回の授業の時間は学校ごとに異なることがありますが、一般的には50−90分と定められることが多いです。1回の授業で1科目の授業が行われます。授業間には休憩時間が10分ほどあり、その間に次の授業の準備をします。
授業には、知識の教授以外にも、実験や体育、美術、工作などの体験型のものあります。また演習といって、問題が与えられて、いままで授業で学習してきた内容を踏まえてそれを解くことによって知識の習得を深めることを意図するものもあります。

 

一回の授業の流れについてです。まず、教師が教室に入ってきます。その授業の範囲である該当の教科書のページを開くように指示されます。その日の学習項目について黒板にチョークを使って、解説されます。そのときに教師は学習内容のなかで重要な要素について整理して黒板に記述します。同時に口頭でも解説されます。生徒は黒板にかかれたものをノートすることが一般的です。こうして、教科書に書いてあることを読んで、同時に教師がそれを理解や記憶の助けになるように解説し、黒板に書きます。それを生徒が書き写します。


授業のなかで理解を確かめる目的で問題を解くように指示されることもあります。生徒をひとり選んで、生徒たちにむけて問題の答えを黒板にかくように指示されるといったこともよく行われます。黒板に書くことのほかに、口頭で解答を述べるように指示されることがあります。これを「当てる」といいます。もちろん教師が当てることの目的は、現在学習している部分の理解を確かめることです。きちんと覚えているか、理解しているか、混乱していないか、模範通りにできるかといったことを教師は評価します。


授業はこのように、知識の教授を中心として、学習内容が解説されながら進行していきます。したがって、授業を活かすというのは、この授業時間内に、授業内容を理解・記憶することといえます。つまり、授業前にはその授業で扱われた内容は理解していなくても、授業の後にはそれを理解できている状態になるということが期待されているのです。

 

次は授業の過程をより詳細に考察していきます。

授業を活用することの重要性

生徒や学生は学校での滞在時間は一日のなかで大きな部分を占めます。例えば中学では、年間1200時間は授業に時間をつかっているのが普通のようです。この授業に使っている時間は決して少なくないのです。
365 * 24 =  8760 h
1日のうち生命維持に必要な時間 =睡眠、食事、衛生+α=7H、1.5H,1H、0.5H = 10H
と考えると、

一日14時間が自由に活動できる時間です。

1年で自由に活動できる時間は、365 * 14 = 5110 h

ですから、

この時間を授業につかっているのであれば、おおざっぱにみつもって、

25%程度はつかっています。つまり1年間に自由につかえる時間の1/4は授業時間にあてているのです。


この膨大な時間を活かせないということは相当な損失です。逆に、きちんと活用できている人とそうでない人と比較すると大きな差が開いてしまうということを意味しています。

もちろん、この授業時間がすべて大学受験などの試験対策に直結しているわけではありません。入試で選択しない科目やそもそも入試として科目のないものもあるためです。だとしても、例えば大学入試の主要科目である、英語、数学の授業時間に関しては関連がもちろんあるわけです。

では、少なくとも、基礎科目である英語と数学に関して、授業を活かして、学力の向上や大学入試への対応力強化をはかるにはどのようにしたらよいのでしょうか。

 

そこで、授業というものをまず一から考え直して考察していきたいと思います。

 

能力は評価できて伸ばすことのできるものなのか

前の記事への考察です。

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能力について、遺伝の影響が大きく効いていそう(50-70%)だというのは、わかりました。これはある種当たり前というところではあります。各個人の経験に照らし合わせてもそうではないでしょうか。学校のクラスでよくできる人とそうでない人がわかれる。よくできる人では別に特になにもしていないというのは誰しも思うところもあるのではないでしょうか。もちろん小さいころから塾に通っていい成績をとっているひともいましたが。

私は、潜在的な学力を決めている能力について、それを向上させることができるし、能力値として評価できる方法が存在すると考えている立場です。遺伝の影響が大きいからといってうまれた瞬間にその人の人生が決まってしまうとは考えていませんし、運や環境の影響ももちろんあるので、そうならないでしょう。

それに50%程度が遺伝の影響ということですが、これも時代の変化でかわる可能性があると思います。現在の教育では、各個人の能力については測定できておらず、そのためその能力をのばす教育ができていない可能性があります。能力の向上に介入できていないのだから、遺伝の影響が大きくでてしまっていると考えています。つまり、将来的に各個人の能力が評価できるようになり、その個々の能力に応じて最適に伸ばすことのできる方法が普及するようになれば、現在と比較して能力に対する遺伝の影響の割合が下がってくることが考えられます。

しかし、この能力を評価するのがやっかいなところだとは思います。例えば数学を例にとってみると、数学の解法を多数暗記したからといって数学の点が伸びないことがあります。試験範囲は有限であり、解法も数には限られてはいるので解法暗記数が多ければ多いほど対応できるとは思います。しかしながら、これまで出たことのない問題やパターンには対応できないという弱点があります。一方、数学の評価者が期待していることは、数学的な考え方をしっかり理解した上でそれを応用して、問題を解決できるということです。つまり、点数という評価項目において、1.暗記能力、2,数学的考え方ができるという2つの能力を考えたとき、その影響の大きさとしては2の方が大きく、かつ2が大きいひとを優秀と判断したいというのが目的となっているはずです。2.の能力については曖昧な想定としていますが、例えば、論理だてて考えることができる、図形の空間把握ができるなどといった項目となりそうです。こういった評価項目を測定するような方法を開発し評価してその影響を調べていくことによって、例えば数学の能力をひとつひとつ分析・分解していき、そのなかで大きな影響を及ぼすものに焦点をあてて訓練を施すことができれば、結果として数学的能力が向上し、点数が伸びうるということになりそうです。

学力について先天的な影響はどの程度あるのか?

学力について遺伝の影響はどの程度あるのかというテーマはおそらく古いものとは思いますが、子を持つ親はみな気にかかるところだと思います。

それに関連した日本人学童を対象にした研究を読んだので私が重要だとおもった点についてまとめておきます。

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https://www.blog.crn.or.jp/report/02/273.html

格差と学業成績―遺伝か環境か 著者: 安藤 寿康(慶應義塾大学 文学部 教授)
掲載日: 2020年4月 3日掲載
 

背景

これまでの行動遺伝学による研究により、知能や学力に対して無視できないほどの遺伝の影響があることが示されている(たとえばLoehlin & Nichols, 1976; Lichtenstein & Pedersen, 1997; Chambers, 2000; Asbury & Plomin, 2013)。著者らは収入や学歴と、子どもの学業成績、そして子どもの学習環境に関する質問票データを使って、遺伝と環境の両方の学力に対する影響力を調べた。

 

方法

対象:科学技術振興機構の『脳科学と教育』プログラムの公募研究として行われていた「首都圏ふたごプロジェクト」の中の横断調査で得られた1,472組の小学生双生児。

評価項目:

・算数・国語の成績 4段階評価
・学習時間 0−3 4段階評価
・塾・おけいこ ありなし

*双生児法は、遺伝的にも家庭環境的にも同じと考えられる一卵性双生児の類似性を、家庭環境としては一卵性と同程度だが、遺伝的には一卵性の半分しか似ていない二卵性双生児の類似性と比較することによって、遺伝要因の関与の有無を予測する方法である。

結果


・サンプル数の大きな400万円以上の所得世帯では、所得が高いほど子どもの学業成績が高い
・所得階層が高いほど子どもの学業成績はよく、学習時間も長く、塾やおけいこに通った経験の割合も高い
・学業成績に関しては低学年で70%以上、高学年でも65%程度が遺伝要因で説明され、格差を生じうる家庭環境要因の影響がない

・家庭環境の効果は、学業成績に関してない

・学習環境に関して、社会経済格差以外の環境的要因(しつけや教育方針に従わせようとする強さなど)のほうが影響として大きい

 

結論

学業成績には家庭環境の影響は皆無で、その個人差の60%から70%が遺伝要因で説明される

 

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メモ


国語や算数といった基礎科目について成績が思いの外、遺伝の影響がつよいことに驚きました。70%程度です。家庭収入や親の学歴といった項目を調整してもこれだけ差がついてしまうのは驚きです。ただし、親へのアンケート調査であり、試験の点数といった客観的指標によっていないデータでの結果であることには解釈に注意を要します。両親の遺伝子の組み合わせで子の学力がある程度決まってしまうということです。もちろん遺伝子の組み合わせである以上親の特性がそのまま子に反映されるわけではありません。昔からあるトンビが鷹を産むというのはこういった現象を格言として伝えてきた結果かもしれません。
生まれながらにして「能力」の初期値なるものが想定でき、それは遺伝である程度決まる。ただし、能力自体は伸ばすことができるので、得意不得意を考慮して教育による能力値向上ができれば問題はないとは思います。逆にいえば、初期値で差があるにもかかわらずそのまま放置していると時間が立つにつれて挽回は困難となるかもしれないということです。

 

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証明の読み方・考え方 読書メモ 第10章

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証明の読み方 10章  否定の否定の決定法

・いくつかの限定詞を含む文の否定 NOTを作る場合、次の3段階の操作を行う
1.全体の文の前にNOTをつける
2.NOTがある限定詞の左にあるとき、それを限定詞の右に移して、「あることが成り立つ」ところのすぐ前に置く。その過程で限定詞を対応する限定詞で置き換える。「すべての」は「存在する」に、「存在する」は「すべての」にする
3.すべての限定詞がNOTの左にきたら、NOTの右にある文を書き換えて、その文の意味の中にNOTを含めてしまう

 

日本語の場合は
1.全体の文を否定する
2.否定と限定詞との論理的順序を交換して、「あることが成り立つ」だけを否定した形にする。その過程で、「すべての対象に対し・・・」と「・・・である対象が存在する」とを互いに相手で置き換える
3.「あることが成り立つ」の部分を否定した文を書き換える

 

・2.でNOTを左から右に移すとき、限定詞は変わるが、ある性質自体はかわらない。

・「すべての」という限定詞を「存在するにするので「、」は「s.t」におきかえなければならない。

・「かつ」、「または」という言葉を含むときには注意を要する。NOTでこれらが交換される

 

メモ
否定文のつくりかたです。記号で表したときに、体系的に順序だててやっています。,とs.t,すべての、存在するといった限定詞を変換していきます。練習や具体例で学習を深めていく章だと思います。

証明の読み方・考え方 読書メモ 第9章

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証明の読み方 9章 対偶法

・対偶法は、はじめにAとNot Bが真であると仮定する。Not Bだけから前向きに推論を進め、Aが偽である(NOT A)という矛盾に到達することを目標とする

 

・対偶法は、仮定Aが「受動的」に矛盾を与えるという意味で、受動的な型の背理法である。これに対し背理法では矛盾に導くために、Aが真であるという仮定を能動的に用いている

 

・対偶法の不利な点は2つの仮定ではなく、ただ一つの仮定(NOT B)から推論をすすめることである。一方、有利な点は導こうとする目標(NOT A)がはっきりしていることである。

・つまり、後退過程をもちいるために、NOT Aに抽象過程を適用することが可能である

 

・A⇒Bという命題は論理的に、NOT B⇒ NOT A と同値である
・したがって、対偶法は、前進後退法を命題 NOT B⇒ NOT Aに対して適用したものとみることができる

 

・結論Bが「・・・でない」という言葉を含む場合、背理法や対偶法を選ぶ。というのも、NOT Bがなにか役にたつ情報をもっていることが多いからである

 

メモ

対偶法について説明した章です。これも高校数学で習うものではあります。前進後退法と背理法、対偶法を比較して述べています。その中で重要なのは、NOT B⇒ NOT Aであるからこれに前進後退法をもちいているというみかたです。

証明の読み方・考え方 読書メモ 第8章

続きです。

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証明の読み方 8章 背理法

・前進後退法でうまくいかないときもあり、そのときには背理法をもちいるとよいことがある

背理法を用いる場合、前進後退法と同様にAが真であると仮定して推論をすすめる

・Bが真であるという結論を得るために、「なぜBが偽にならないのか」という単純な質問からはじめる

背理法の発想は、Aが真でBが偽であると仮定して、なぜこのことが成り立たないかを調べることにある

背理法による証明ではAとNOT Bを仮定して、これらを使って絶対的に正しいことがわかっていることへの矛盾に導いていく

 

背理法は、AとNOT Bをを真と仮定しているので推論の仮定を2つ使える

・NOT Bという仮定からなにか役に立つ情報が得られる場合には背理法をもちいるとよい

・一般に結論Bが「ある2つの起こりうるもの」の一方である場合には、背理法が有効である

・結論Bが「・・・でない」という否定の言葉を含む場合には背理法は有用である

・結論Bが「存在する」という限定詞を含むとき、構成法で構成できないとき、そのようなものが存在しないと仮定して推論し矛盾を導くこともある

 

メモ
背理法について説明している章です。これは高校数学でもおなじみです。
NOT Bを仮定できるので、使える情報が増えるのがよい点です。少なくともひとつはとあったときは、すべての・・・で〇〇と仮定して仮定に反することを導くことも考えられます。

東大理III合格者の勉強法 その2

続きです。

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個別の教科に関してです。

英語、国語、数学といった基礎力があれば、理科は1年程度の追い込みでなんとかなるといっている人が多いです。これは、数学などの基礎的な科目の学習による、いわゆる潜在的な学力向上の効果によって、それと関連する科目もおのずと成績につながるようになると考えられます。この潜在的な学力は、たとえば科目特有の問題の解法を暗記するだけといったことではおそらく上昇しないと考えられます。扱っているテーマを理解し、抽象化して他人に説明できるようにするといった「能力」というべき学習の根源的なところで、潜在的な学力の向上がもたらされるのだと思います。

 

数学について、合格者達の数学の問題に対する向き合い方としては、まずは基本的な問題をしっかり覚える。基礎〜標準問題も同様に学習していく。そして、応用問題を解くことを通して、一見解いたことのない問題であっても、切り口を見つけ出し、その応用問題がどういった基本的な問題のパターンから構成されているかを見抜き、解答していく。これを繰り返すといったことでした。

口々、パターンの組み合わせ、パズルを解くようにということばが聞かれました。使っている教材については、塾のものをベースにして徹底する人が多いようです。

そういったもの以外につかっている教材として、大学への数学をつかっていたという人がほとんどの印象です。解法暗記型のひとでも、数学が得意でありまた好きで趣味的にやっているひとも結局は大学への数学がよいといっていました。

もともと東大数学はパターン学習だけでは困難であることは多くの人がいうことですし、大学への数学といった教材での、一般的な参考書にない切り口での学習がよい効果をもたらすのかもしれません。学コンをして思考力を養ったという人も数人いました。

 

具体的な時系列にそった学習の流れです。ちまたでいわれている、いわゆる王道コースは、トップ難関中高一貫校に入り、鉄緑会に中学1年から入り、それにしっかりついていくように毎日勉強する。英語や数学は早期に高校学習範囲を1週した後に、入試問題を通した演習によって、学習内容の深化させていく。過去問や模試といった志望校を見据えた実践的な訓練をつみ、時間制限や緊張といった要素にも対策しつつ、入試の日を迎えるといった流れになるのでしょう。

 

 

長い目でみるとわずかな実力の差が大きく効いてくる

 


面白い確率に関しての記事を読みました。

解法の探求・確率 - 東京出版の公式直販オンラインショップ 東京出版WEB STORE


場合の数や確率に関する演習において大変な良書です。そのなかでも読みものとしても面白いです。その書籍 解法の探求・確率のなかで、このあとがきにもあるように、確率に関して非常にためになり、人生といった部分にも示唆を与えてくれるような記事です。具体的な計算方法や条件については該当のページをぜひ読んでみてください。具体例もわかりやすく興味を引きます。

 

その概要です。

破産の確率について、
2者対決で持ち点のとりあい、破産させる(相手の持ち点が0になる)までゲームを繰り返す。
破産の確率を決める要素は、資金量の差と実力の差

・実力が互角のとき、相手を破産させる確率の比は、資金の比となる。

・持ち点は同数だが、実力に差があるとき
→実力が相手のm倍のとき、相手が破産する確率はm^n倍

 


・実力が同じで、資金がm倍 →持ち玉の個数によらず相手が破産する確率はm倍

・持ち点は同じだが、相手よりもわずかに実力が上(m =1.1)

n= 10 →1.1 ^10 ≒ 2.6倍
n= 20 →1.1 ^20 ≒ 6.7倍
n=50  →1.1 ^50 ≒ 117倍
n=100  →1.1 ^100 ≒ 13780倍
指数関数的増加なので持ち点(試行回数)が多くなるとものすごい倍率で差がついていく
→長い目で見れば実力がすこしでも上の方が、有利

 

メモ
試行回数が多いゲームでは実力のわずかな差がものをいいます。
人生といった長いスパンのものを考えると、2者対決において能力という観点でみつめるとわずかな差が大きな差になりうるということです。2者は対人以外のクラスでも適応できそうです。こういった定式化されたもので現実の問題に対してどのように同じ要素をみつけて解釈できるかを考えることが思考の訓練になると思います。

 

テストの点数では評価が難しいが学習の基礎や基本を構成する、「能力」・「地頭」との向上・発展といった部分を意識した教育が重要です。テストで高得点をとることを目標にした暗記学習と対比されるような、数や量に対する感覚、空間や図形の認識能力、ものごとの論理性を順序だって追えること、目の前の現象から法則を抽出すること、計算の原理の理解といった「能力」開発が求められているのでしょう。幼少期からこういった、能力開発ができれば、時間とともに学力は自ずと向上し、そういった能力開発をしていない場合と比較して圧倒的な差を高校卒業までには獲得している可能性があるということになります。

東大理III合格者の勉強法


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最近Youtubeなどで東大理III合格者の勉強法について複数人みる機会がありました。
そのなかで共通する要素を抽出しまとめます。

 

東大理III合格者の背景ですが、難関中高一貫校卒業者が多数を占めています。中学受験を経ているということです。もともとのいわゆる地頭のよさをもっている人が多いのでしょう。また、中学受験は小3〜4年から勉強を開始することがほとんどで、塾に通うのも普通です。勉強の習慣としては、少なくとも10歳ごろからみっちりやっているということです。中学受験時の算数としてのトレーニングもおそらくその後の大学受験にも好影響を与えていると考えられます。図形問題や整数問題といった部分は大学受験にも共通していますし、より幼いころからはじめたこういった数や量に対するトレーニングは有効な可能性があります。

 

難関中学に入学後は、都心であれば中学1年から鉄緑会などの塾に通うことが多いようです。東大合格を第一の目標としている塾でありその東大入試対策へのノウハウは他に引けをとらないでしょう。進度はかなり早いようで高1までには数学全範囲が終わるようなカリキュラムだそうです。この塾に通っていない方の体験談でも、数学を早い段階で高校の範囲を終わらせておくことが重要といわれていました。英語に関しても単語力の強化やリスニングについても高校1年にはかなり完成するくらいに集中してやっているようです。

 

大受験の要は英語と数学であり、これを早期に高いレベルにもっていくことが要求されます。一般的に時間をとらえる英語と数学を高1というはやい段階である程度のレベルにしておくことは不可欠のようです。

 

東大理3入試では国語が出題されます。合格者達は差はあまりつかないということが多いですが、その人たちのなかには、直接点数に反映されていない部分でも総合的な学力といった目にみえず、点数化できない部分で国語力が効いているという人もいました。

この点については納得するところで、正しく問題文を読んだり、教科書を理解し、内容を把握すること、学習内容を理解し要約する力、国語以外での試験における記述問題での文章構築能力といった部分は確かな国語力が必要だと思います。

証明の読み方・考え方 読書メモ 第7章


続きです。

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証明の読み方 7章 限定詞 ー IV 特殊化


・仮定Aが「存在する」という限定詞を
「ある性質」をもった「対象」でそれについて「あることが成り立つ」ようなものが存在する
という形で含んでいるとき、このことを証明に使う

・xを(ある性質)をもった(対象)で、それに対し(あること)が成り立つものとするとして推論をすすめる

・仮定Aが「すべての」という限定詞を含んでいるときには特殊化という方法が使える
「ある性質」をもったすべての「対象」に対して、「あることが成り立つ」という形である

・仮定Aを特殊化して、与えられた性質をもつある特定の対象に対して適応する

・特殊化を行う場合には記号や文字の対応をはっきりさせる

・特殊化を適用しようとする特定の対象が示されたある性質をもっていることを確かめておく

 

メモ
これまでの章では結論Bの中に限定詞が現れた場合の証明について述べられていましたが、この章は仮定Aの中に現れた限定詞を利用する方法について説明しています。
具体的には、ある集合の要素を「特殊化」させて、ある文字sで代表させるといった具合です。
抽出法は「(ある性質)をもった(対象)で、それに対し(あること)が成り立つ」ことを示すときに用い、特殊法は「(ある性質)をもった(対象)で、それに対し(あること)が成り立つ」ことがわかっているときにもちいられます。

証明の読み方・考え方 読書メモ 第6章


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証明の読み方 6章 限定詞 ー III 帰納法

・「すべての」という限定詞を含み、結論Bが特殊な形をしているとき、数学的帰納法がつかえることがある

・Bがすべての正の整数nに対して「あることが成り立つ」という形のとき、帰納法をもちいてみる

・抽出法と同じように、帰納法もまた一種の自動証明機械のようなものである

・P(n)が成り立つとみなしたとき、P(n+1)が成り立つことが確定するようにつくってやればよい

・すべての操作を始めるまえにP(1)が成り立つことを証明しておく

・P(n+1)をなんらかの方法で、P(n)を用いて書き換えることを考える

・nの最初の値は1でなくてもよい問題もある

・P(n)だけでなく、その前にあるすべての命題が成り立つと仮定して使うことができ、このような証明法を累積帰納法という

帰納法の成功の鍵は、P(n+1)をP(n)またはその前にある命題とうまく関連づけられるかどうかである

 

メモ
この章は数学的帰納法について解説しています。高校数学でもおなじみです。前章の抽出法はこういった名称や概念で教えられることがないため意識し難いと感じられます。すべての・・・であり一部分をとってきてそれがもつ性質をつかって要求されるものを示すという広い立場では、抽出法も帰納法も同じように捉えることができるように思います。帰納法のほうが方法・やり方がはっきりしているわかりやすい気がします。

証明の読み方・考え方 読書メモ 第5章


続きです。

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証明の読み方 5章 限定詞 ー II 抽出法

・「すべての・・・に対し」という限定詞を含む命題を扱うための技法に抽出法がある

・集合の定義特性は、述語の定義が果たすのと同じ役割を果たす
・「あるものがある特定の集合に属することを示すにはどうすればよいか」という抽象質問に対し、それが集合の定義特性を満たすことを確かめることが答えになる


・すべてのという限定詞を含む命題は共通の構造をもつ
・「すべての・・・に対し」という限定詞が現れるとき、結論文は、
{ある「性質」をもったすべての「対象に対して」「あることが成り立つ」。}という形をもつ

・後退過程の途中で「すべての」という限定詞が出てきたとき、その命題が正しいことを示すのに、与えられた性質をもつ対象をすべて求め、これらに対し要求されることが成り立つことを逐一調べるのもひとつの方法である。
・しかし、対象が無限個などの場合にはこの方法がつかえない。

・対象を列挙できないときには、集合の定義特性を用いて解決する。また抽出法を用いてもよい。

 

・抽出法は、与えられた性質をもつすべての対象に対し、要求されるあることがなりたっていることをひとつひとつ確かめる代わりに、それをたしかめるための機能をもった証明機械のようなものと考えることができる。
・証明機械の内部機構の設計法を教えるのが抽出法である

・与えられた性質をもった対象 (入力)→ 証明機械 (出力)→成り立つこと

・まず抽出法によってその性質をもったものを一つ選び、次にその選んだものに対し、要求されることが成り立つということを前進後退法によって証明する

・そうしてできた証明機械はその性質をもったどんな対象に対しても同じ証明を繰り返し行う能力をもつ

・抽出法をもちいるときはいつでも、仮定Aのほかに抽出した対象がもつ性質を前進過程に使うことができる

・「・・・を任意の・・・とする」という表現は抽出法が用いられていることを表す場合が多い

・抽出法は結論が「すべての」という限定詞を含んでいる命題を扱うのに有効な方法である。

・これをもちいるには、まず与えられた性質をもった対象を一つ選び、その対象が与えられた性質をもっていることと仮定Aとから前進後退法によって、要求されることがなりたっていることを示せば良い

 

メモ

すべての・・・とつく結論を証明することについて書かれた章です。

まず、性質をもつ対象を一つ選びます(例えば実数x'とひとつ抽出)。仮定Aを使い、式を変形します。実数のもつ条件を使います(例えば、(x’^2≧0))。そして要求されている性質が満たされていることを示します。ひとつ抽出してきてそれがもつ性質をつかって要求されていることを示すのが抽出法です。

 

証明の読み方・考え方 読書メモ 第4章


続きです。

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証明の読み方 4章 限定詞  I 構成法

・結論Bの特殊な形として、「・・・が存在する」と「すべての…に対して・・・」といったものがある。これらの言葉を限定詞という。これらをもつ命題に対してそれぞれ独自の証明技法がある。

 

・存在限定詞(・・・が存在する)を含む命題に対する証明技法に、構成法がある

・存在限定詞が使われているときには共通した基本構造をもつ
・「ある「性質」をもった「対象」で、それについて「あることが成り立つ」ようなものが存在する。」という構造をもつ。

 

・後退過程の途中で「・・・が存在する」という限定詞が出てきたらそれが正しいことを示す方法に構成法をもちいる

・その方針は、もとめるものを構成する(推定し、作り出し、作るための手続きを考え出す)ことである

・つくったものが、必要な性質を持ち、成り立つことを示さなければならない

 

・求める対象の作り方は、仮定Aのもつ情報をつかう

・結論に「・・・が存在する」という限定詞が出てきたら前進過程に転じて求めるものを作りだすように考えてみるのがよい

・限定詞はしばしば隠されていることもあるため、「・・・が存在する」という形に書き直すも必要なことがある

 

・構成法で成功するには求める性質をもった対象をつくりだす創造力が必要である

・つくったものが要求される条件を満たしていることを示す必要がある。そのもとは仮定Aから提供される

 

メモ
存在の証明とよばれるものを扱っている章です。「存在すること」を示すために,それを作ることを目指します。 
存在するといっているものを1つみつけ、それが要求されている性質を満たすことを数学的に議論します。

今回の話をよりわかりやすく以下資料で解説されています。Google検索で読むことができます。嘉田 勝「証明を理解するための考え方」(数学セミナー 2009 年 5 月号 掲載巻 48 掲載号 5 掲載通号 572 掲載ページ 20~23)。

 

証明の読み方・考え方 読書メモ 第3章


前回、前々回の続きです。

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証明の読み方 3章 定義と数学用語

・抽象質問に答えるのに、最も効果的なのは定義に従って考えることである

・定義とはそれを使う人の合意が得られるように用語の意味を定める表現である

・定義は特定の概念を略記するための合意事項である

・前進過程と後退過程に定義を使うことは証明の際に絶えず行われる

・同じ概念に二通りの定義ができることがある

・採用した定義が別の定義と同値であることを証明するには、A⇒B、B⇒A⇒を示せば良い

・前にある命題の結論を利用して抽象質問に答えることは常に行われる

 

メモ

この章では、証明の際に重要となる、「定義」や数学用語について説明しています。数学の問題を解く際に、しばしば「定義に帰れ」といわれますが、この本でもこの点が強調されています。