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学力について先天的な影響はどの程度あるのか?

学力について遺伝の影響はどの程度あるのかというテーマはおそらく古いものとは思いますが、子を持つ親はみな気にかかるところだと思います。

それに関連した日本人学童を対象にした研究を読んだので私が重要だとおもった点についてまとめておきます。

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https://www.blog.crn.or.jp/report/02/273.html

格差と学業成績―遺伝か環境か 著者: 安藤 寿康(慶應義塾大学 文学部 教授)
掲載日: 2020年4月 3日掲載
 

背景

これまでの行動遺伝学による研究により、知能や学力に対して無視できないほどの遺伝の影響があることが示されている(たとえばLoehlin & Nichols, 1976; Lichtenstein & Pedersen, 1997; Chambers, 2000; Asbury & Plomin, 2013)。著者らは収入や学歴と、子どもの学業成績、そして子どもの学習環境に関する質問票データを使って、遺伝と環境の両方の学力に対する影響力を調べた。

 

方法

対象:科学技術振興機構の『脳科学と教育』プログラムの公募研究として行われていた「首都圏ふたごプロジェクト」の中の横断調査で得られた1,472組の小学生双生児。

評価項目:

・算数・国語の成績 4段階評価
・学習時間 0−3 4段階評価
・塾・おけいこ ありなし

*双生児法は、遺伝的にも家庭環境的にも同じと考えられる一卵性双生児の類似性を、家庭環境としては一卵性と同程度だが、遺伝的には一卵性の半分しか似ていない二卵性双生児の類似性と比較することによって、遺伝要因の関与の有無を予測する方法である。

結果


・サンプル数の大きな400万円以上の所得世帯では、所得が高いほど子どもの学業成績が高い
・所得階層が高いほど子どもの学業成績はよく、学習時間も長く、塾やおけいこに通った経験の割合も高い
・学業成績に関しては低学年で70%以上、高学年でも65%程度が遺伝要因で説明され、格差を生じうる家庭環境要因の影響がない

・家庭環境の効果は、学業成績に関してない

・学習環境に関して、社会経済格差以外の環境的要因(しつけや教育方針に従わせようとする強さなど)のほうが影響として大きい

 

結論

学業成績には家庭環境の影響は皆無で、その個人差の60%から70%が遺伝要因で説明される

 

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メモ


国語や算数といった基礎科目について成績が思いの外、遺伝の影響がつよいことに驚きました。70%程度です。家庭収入や親の学歴といった項目を調整してもこれだけ差がついてしまうのは驚きです。ただし、親へのアンケート調査であり、試験の点数といった客観的指標によっていないデータでの結果であることには解釈に注意を要します。両親の遺伝子の組み合わせで子の学力がある程度決まってしまうということです。もちろん遺伝子の組み合わせである以上親の特性がそのまま子に反映されるわけではありません。昔からあるトンビが鷹を産むというのはこういった現象を格言として伝えてきた結果かもしれません。
生まれながらにして「能力」の初期値なるものが想定でき、それは遺伝である程度決まる。ただし、能力自体は伸ばすことができるので、得意不得意を考慮して教育による能力値向上ができれば問題はないとは思います。逆にいえば、初期値で差があるにもかかわらずそのまま放置していると時間が立つにつれて挽回は困難となるかもしれないということです。

 

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